SUB STORY YUKI #01「開発の彼方に向けて」

衝撃音と共に、開発棟が揺れた。

「ユキ〜〜〜!!!」
どうやら数キロ先の格納庫にも届いたらしい。通信モニターから、いつもの聞き慣れた怒鳴り声が響いた。

今日も不機嫌のようだ。放っておこう。彼女に構っている暇はない。
ユキと呼ばれた少女の頬は紅潮し、口元は緩みっぱなしである。
また成功したのだ、私の崇高な実験が。
心の奥底から沸き上がる快感に、感情を抑えきれない。
「あーはっはっはっ!!」

目が大きくややつり目。ツインテールに愛くるしい笑顔。幼い顔立ちはメカニックなどの現場では人気者(一人を除いて)。
しかし今の、一人悦に入り高笑いする姿は、まるで狂気の科学者。近寄りがたい。

弱冠13歳にしてアメリカで博士号を取得、天才科学者として学会からも一目おかれる存在。
素粒子物理学を専攻し、2年前にCERN(欧州合同原子核研究機関)の研究員としてヒッグス粒子の発見に貢献している。さらにそれをもとに超対称性理論に関する論文を発表。
国連軍に実績を買われ、高エネルギー加速器重イオンコライダー開発経験を活かした、未確認知的生命体迎撃用武器開発に携わっている。
簡単に説明すれば、レーザー兵器である。

ユキが開発した兵器の中でも、レーザー攻撃を相殺するレーザーシールドは秀逸である。
たくさんのパイロットの命を守ってきた。そして地球を救ってきた。
しかし、本人にはあまり自覚がない。

「でも、ちょ〜っと出力を上げすぎたかな・・・。バト(バトルドライバー)に繋ぐと、軽く10TeV(10兆電子ボルト)を超えるよね。さすがに砲身が持たないか・・・。」
ブツブツと小言をいいながら、さらに改良点が無いか資料を探り、キーボードを叩く。
実験データを表す複数のモニターを瞬時に見回し、出力の調整に没頭する。

「成功したら輝ねーに褒めてもらおう!」
くふふと嬉しげに笑う。が、傍から見ると怖い。

今の時代がいいとは思わない。地球を救いたいとも思わない。
私の力を解放できるこの環境が、私を必要としているだけ。この忌まわしい能力を世界が求めているだけ。
それならば全力を注ぎ、未確認知的生命体とやらを焼き尽くしてみせよう。

ざわざわと血が騒ぐユキであった。

折刃ユキ

折刃ユキOLFA-YUKI

弱冠13 歳にしてアメリカで博士号を取得。学会からも一目置かれる。
自他ともに認める天才科学者。明るく元気。小柄な体型を気にしている。